--  軽井沢の別荘  --

 

与件


敷地は1000坪。
平坦、南北に奥行きが深い。
3棟ある既存の建物のうち2棟を解体し、新しい別荘を建てること。
来客が多い。それも、多人数がしばしば訪れる。よって広いラウンジとダイニング、数人宿泊出来るゲストハウスが必要。
客をもてなすバーベキューテラス---森の中の。
夏は高湿。
激しい夕立。
不在時には管理人が建物の面倒を見てくれる。
苔の美しさ。
奥の芝生は、唯一、光溢れる場所である。しかも静か。
木は、切らない。既存の暖炉は、残したい。

 

 

 

 

 

解答


木を切らずに済むよう、建築は、解体した2棟の跡地に配する。
苔の森に面したゲストハウスと、芝生を望むオーナー住居。
柱廊が、両者を貫く。
未遂の幾何学。
曖昧な連結。
露出する鉄骨梁には、薄く防露被覆をかける。
木材にはCCAを注入する。
意図的不整合---床と壁、そして屋根。
未完結な形象。
《場》の拡散。
屹立する塔。
《空間》の凝縮。
離散的配列。
既存の暖炉は、建物に寄りかかるように立っており、解体時に崩れた。
新しい炉を、そのままの位置につくる。
集落の気配。
記憶の残映。


こうして1987年夏、林の中に埋め込まれるようにして、別荘がひとつ完成した。

 


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(C)株式会社 榎本弘之建築研究所